はぎまちブログ

このブログは山口県萩市の古い町並みに残る古民家の住み継ぎを考える「萩つくる会」の活動を紹介しています。

浜崎伝建おたから博物館にて

毎年の恒例、浜崎伝建おたから博物館も今年で19回目。住民の手作りイベントですが、よくここまで続いたものです。

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町並みを巡ることを楽しむだけの単純なイベントですが、リピーターが多いです。

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今年はお船倉での明倫小学校児童の朗唱や魚市場ではセリなどもあって盛り上がりました。

 

さて、今回はこのおたから博物館で、修理中の町家の公開をしました。

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建てられたのは、1700年代後半にまで遡り、現存する浜崎の町家の中でもトップ3に入るくらい古いものです。

この町家は長く空き家になっていて、屋根が抜け落ち、倒壊寸前のところを拾われ、大修理に着手しました。

土台の多くは取替ることとなり、柱も大半が根継ぎをしないといけない状態でした。一方で、大きな胴差しや屋根を支える小屋組などは200年を超えた今日でもしっかりとした状態を保っています。

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外から恐る恐る入ってきたお客さんは、一堂に上を見上げ、おーと声をあげます。

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子供たちは探検気分。f:id:hagimachi:20160606000616j:plain

中には、この建物に小さい頃に遊びに来た人もいて、昔は大津屋という駄菓子屋さんだったなーと・・・。

いずれにしても、楽しい一日でした。

 

秋に完成した後は貸家になる予定でしたが、再生される姿を見えるに従っていくつか引き合いもあるとか。

建てられてから200年ちょっと、何代目の家主さんになるんでしょうか。完成が楽しみです。

- yo -

 

 

繕い仕事

近くに美しい土塀があります。

伝建地区でもなんでもない町かどです。

ある日、軽トラに乗っかったおじさんが何やら作業をしてます。

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おじさんの帰った後をみると、瓦の代わりに塩ビの板が瓦の代わりに挿してあります。

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ああ瓦が破れた(壊れた)んだなと思いました。

で、後日、見ると瓦に差替えられています(赤矢印)。

しかも、よく見ると熨斗(のし)瓦の欠けた部分まで補修されています(青矢印)。

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これで、心配なし。

多分、この土塀はこういう繕いを繰り返して、今に至ったのでしょう。

土壁は表面が洗われ、瓦も良く見るとまちまちです。

なのに、とても美しい。

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建てた時の性能を競い、メンテナンスフリーといいながら、

家電のように耐用年数を過ぎると産業廃棄物化する商品住宅がもてはやされる時代ですが、繕い仕事を重ねて年を追うごとに美しくなるこの土塀の方が、すてきです。

食べ物と住まいくらいは、こうありたいものです・・・。

- yo -

旧小林家住宅修理現場研修会

去る3月6日(日)に佐々並市伝建地区内で現在、改修工事が進められている旧小林家住宅の修理現場研修会を行いました。

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旧小林家住宅は、明治時代に建てられた旅館建築の主屋と大正時代になってから増築された土蔵、昭和14年頃に増築された離れからなる複合建築です。

概要は以前のブログで紹介しています。

旧小林家住宅内覧会 - はぎまちブログ

 

昨年の秋から工事がはじまり、屋根瓦が降ろされ、外壁が取り払われ、床も撤去され、まあ、丸裸の状態です。

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毎度、思いますがコンクリートも鉄骨も使わず、木組みと土と石でよくもこれだけしっかりとできるもんだと思います。

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壁のススや柱や梁に残る数多くの痕跡から建物の元のカタチや歴史が分かってきます。

「痕跡」という言葉は最近、テレビの刑事ものや探偵もので鑑識が使う用語として耳にしますが、まさに建物の痕跡からその時の様子が浮かびあがる様は謎の時のようなものです。

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こちらは、痕跡図と言って、柱や梁に残る細工の跡やキズなどの情報を図にまとめたもので、これを組み合わせると・・・こんな風に昔の間取りが復原できたりします。

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土蔵の方では、既に修理が始まっています。

長年の湿気などで傷んだ足元の部材を取り去り、新しい部材と古い部材を「継ぎ手」と呼ばれる技術で組み合わせると、こんな風になります。

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まさに繕い仕事ですが、なぜか美しいです・・・。そして、また100年後に受け渡されることになります。

 

研修は今後も続けていきます。

- yo -

 

 

 

 

 

佐々並市冬景色

西日本に記録的寒波がきました。

萩にも寒波がやってきました。

 

三角州内でも10~15㎝近く雪が積もりました。

しかし、山深い佐々並はさらにすごいことになっていました。

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例の改修中の住宅もすごいことになってます。

新年の佐々並市にて - はぎまちブログ

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でも、佐々並のじいちゃん、ばあちゃんに聞くと

昔はよくこれくらい降っていたとのこと。

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春が楽しみになります。

 

- yo -

 

古民家×サテライトオフィス

みなさん、サテライトオフィスって聞いたことありますか?

ウィキペディアによると、本拠から離れたところに設置されるオフィスとあります。

サテライト・オフィス - Wikipedia

支店とか営業所とかじゃなくて、あくまでその会社の業務を

拠点から離れた場所で、まるで本店と同じようにやるようなイメージで、

インターネット環境が整った現代だからこそ、あり得るオフィスの在り方のようです。

高速通信環境を活かして、地方であっても東京のオフィスと同じような

業務ができる業種で、ひとつの働き方として盛んになっていて、徳島などは県を挙げて取り組んでいます。

企業一覧 / 徳島サテライトオフィスプロモーションサイト Tokushima Working Styles

ネットにより場所を問わなくなると、かえって場所の質が問われるようになり、

古民家でオフィスをやりたいという企業もあります。

その実験プロジェクトとして、つい最近まで明木(あきらぎ)の古民家において、

サテライトオフィスの実証実験が行われていました。

東京のIT企業ダンクソフトという会社が明木の古民家を3週間ほど借りて

実際にサテライトオフィスとして利用してみて、その実効性を確かめるというプロジェクトです。

 

さて、縁あってこのオフィスとして利用されていた古民家を見学させてもらうことができました。

明木は、萩城下町から瀬戸内の港町の三田尻までを結ぶ萩往還のかつての宿場町です。このブログでもちょくちょく出てくる佐々並と同じですが、明治中期に大火があり、町並みのほとんどをその時に焼失しました。ですから、多くの古民家はその後に建てられたものですが、その分、耐火も意識した重厚な民家が多く、佐々並とはまた違った風情です。

今回の民家がこれ。

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萩往還沿いには軒裏まで塗り込めた重厚な主屋と門を構え、その裏には土蔵や立派な庭園も備える立派なものです。石州赤瓦も映え、萩城下の町家とは全く異なる魅力があります。

内部も、よく手入れがされているので、サテライトオフィスとして利用できたんでしょう。座敷境に雨戸を引いた一筋敷居と鴨居(写真の赤矢印)が残され、縁側はもともと吹きさらしであったようです。

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佐々並もそうですが、座敷には座敷意匠としては必須アイテムの長押を打たず、厚鴨居に溝だけを彫り込む独特の意匠がみられ、萩城下町の古民家とは異なりますが、壁を黄土で仕上げ、足元に筍面を見せる面皮付の床柱を用いるなど明治中後期の萩地域の座敷と共通する要素もあります。

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便利さに満たされ、空調のきいた快適なオフィスで業務をしてきたIT企業が、どうしてこうした古民家にオフイス環境を求めるのか・・・。

 

これまでの古民家で語られる風情とか懐かしさとか、そんなものでないもっと本質的なものを彼らは求めているような気がします。

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世の中が一周まわって、古民家が東京のハイテクオフィスの先を行く時代がきたんでしょうか・・・。

- yo -

 

 

三度、大照院保存修理現場研修会

秋も深まって参りました。

今年は、NHKの大河ドラマや「明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」の世界遺産登録など、何かと賑やかな萩のまちです。

そんな派手さはないのですが、少しずつですが、大照院本堂ほかの保存修理が進められています。

 

大照院保存修理工事は、平成22年から進められていて、これまでも萩つくる会でも節目節目に現場研修会を開催しています。

<過去の研修会の様子>

大照院保存修理現場見学会

http://blog.hatena.ne.jp/hagimachi/hagimachi.hatenablog.com/edit?entry=11696248318754824420

 

再び、大照院保存修理現場見学会

http://blog.hatena.ne.jp/hagimachi/hagimachi.hatenablog.com/edit?entry=12921228815712497429

 

↑ 前回の研修会の時にはすっかり解体されていた本堂の小屋組が

部材の補修を終えて、再び組みあがりました。

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見事な木組というほかありません。

残念ながら、この上に屋根下地が造られ、瓦が葺かれますので、この姿が再び拝めるのは、さあ200年後くらいでしょうか・・・。

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ハイテクの部材や工業製品など何も使わず、

複雑な構造計算もせず、今、話題の杭も打たず、

ただただ地域に育った木を削って組み合わせることで、これだけの大空間をつくり、

しかも250年以上も維持される建物が建てることが出来るわけで・・・その迫力が伝わってきます。

 

- yo -

 

 

近くの古民家

近くの遊園地じゃありませんが、観光客のみなさんが訪れる萩の古民家も、まあ、いつでも行けるからいいやという感じで、実はなかなか行く機会がなかったりします。

南古萩町にある「俥宿 天十平」もそのひとつ。

久しぶりに、中にまで踏み込んで、至福の時を過ごさせてもらいましたので、おすそわけです。

門をくぐり、庭に出ると主屋が見えてきます。

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主屋は、もともとは江戸期の建築だそうで、明治に入ってから大改修がされたとのこと。確かに、古いのですが、よく手入れが行き届いています。

縁側から上がらせてもらうと、アレ、竹林が・・・。

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民家の奥行きをうまく使った作品が迎えてくれます。内部に入ると続き間の建具を外して、一室使いした展示スペース。置いているひとつひとつの食器やアクセサリーが、渋い光を放ち、この空間に映えています。

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ほんとにモノに引き込まれます。多分、きれいなショールームで見ていても、こうはなんらないんだろうな・・・。

 

せっかくなので、別棟の喫茶でアイスミルクティーを飲みました。大正期に増築された応接室で、かつては、産婦人科の診察室にも使われていたこともあるとか。

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窓から差し込む光も心地良く、まさに至福の空間です。

 

江戸時代の武家の屋敷に明治から大正に改修や増築が加えられ、今の所有者がこれらに磨きをかけて住みこなされています。東京に行けばクールな建築空間は多々あるけど、このクールさは萩のここでしか造れないクールさです。

 

おまけ この屋敷の西側には小路があります。雨の後には、この石積みから庭に降った雨が浸みだしてきます。

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コンクリートで固めた擁壁だと、ただ側溝に流される雨も、少しずつ浸み出して外に還されていくのを見ているとエコロジーだとかじゃなくて、ただただ美しく感じます。その浸み出た水が流れ込む溝には、カニがたくさん住んでいます。

- yo -

 

萩のモダン

萩の町並みと言えば、やはり城下町というイメージを持たれるでしょう。

実際、土塀や町家の町並みの基盤は江戸時代につくられたものです。

まあ、実際のものとしては、明治以降に改変されたものや

築かれたものが相当あるのですが、基本、その流れが受け継がれています。

 

一方で萩ではあまり洋風建築や近代建築が目立ちません。

「和」の町並みでも、町角にひとつふたつといい洋風建築や近代建築があると、

町並みにスパイスが効いていい味がでるのですが・・・。

昔の写真などを見ると、萩にも結構いい洋風建築や近代建築があったのですが、

なぜだかあまり残っていません・・・(涙)。

 

そんな中、古萩町に昭和初期建ての近代建築があり、現在、改修中です。

鉄筋コンクリート造に見えますが、木造木摺り下地にモルタル塗で

古典主義建築の軒廻り(かっこよく言うとエンタブラチュアと言います)

を模した装飾を造り出しています。

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前から気になっていましたが、いつ取り壊されるのか心配でしたが、幸運にも改修して使われるようです。さて、どんな姿でどんな活躍をするのか楽しみです。

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初夏の一日

春の活動をさぼっていたらあっという間に初夏がきました。

今年度の総会を開催する前に、ある町家の内部見学をしました。

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町家といっても、主屋の脇に門を構え、その横に土蔵を並べるとても大きな屋敷です。

道からみても立派ではあるのですが、内部に入ると外から見た印象の倍以上の驚きがあります。

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聚楽壁が印象的な本座敷、広い土間、庭に突き出した数寄屋風の新座敷など、主屋だけでもみどころ満載ですが、その奥に広がる庭園も圧巻です。

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座敷からの眺めを第一に整えられた庭のように見えますが、この中を回遊して奥に行くと茶室にたどり着きます。

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ここが三角州の真ん中の旧町人地であることを忘れてしまいそうになります・・・。

 

所有者さんのご厚意でこんないい体験をした後には、まじめに総会です。

今年度については、主軸である保存修理の現場研修会の他に、さきほどの町家のような萩にのこるこれらの財産の建築的な評価や利活用について考える内覧研修会を盛り込んでいます。

いよいよ夏がはじまりました・・・。

 

- yo -

韓国から

韓国から学生さんが萩に来ました。

蔚山科学技術大学校という国立大学があります。

ちなみに蔚山はウルサンと呼びます。

蔚山と萩は姉妹都市です。

蔚山は現代重工のお膝元です。

そんな、韓国の科学技術を担う大学の学生が

萩に学びに来たのは、木造建築です。

豊かになった韓国で、今、木造建築が見直されています。

男の子が5人、女の子が2人、だれも日本語が話せず、

通訳をしてくれる萩在住のスンミさんが頼りです。

ちょうど、椿で建築中の大工さんが造る在来構法の住宅を見学に行きました。

左が建築中の主屋、右が納屋です。

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この組み合わせ、以前にも見たような・・・。

前回の佐々並市で改修中の農家と同じ組み合わせです。

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妻入りの納屋にくっつけて主屋を建てて、庇下空間を共有するような

建て方が萩の農家建築の普遍的なスタイルのようです。

 

施主のご厚意で、中でまで見せてもらうことになりました。

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しっかりとした木組に包まれると気持ちが引き締まります。

新建材で包まれたメーカー住宅とは反対に、仕上がる前に本当の価値が見えます。

言葉の分からない彼らも、現場に食いついていました。

建築は言葉を超える・・・。

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韓国も日本も食文化も建築文化も大事にしたいものですね。

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